新品仕上げのススメ
以前のブログで、新品仕上げ(傷取り)の中でも鏡面仕上げについて時計修理技術者コラムVol.18 新品仕上げについて~鏡面仕上げ編~でご紹介いたしました。今回はヘアライン仕上げについてご紹介いたします。
ヘアライン仕上げとは
ヘアライン仕上げ(hairline finish)とは、金属の表面処理の一種で、単一方向に細かい線状の模様を入れる加工方法を指します。傷を入れることで、つや消しの効果があり、金属の落ち着いた雰囲気が出ます。また、前回ご紹介した鏡面仕上げと組み合わせることで造形のメリハリを表現することができます。
長年使用すると使用傷が増え、ヘアラインが薄れてしまったり、鏡面仕上げとヘアラインの境界がはっきりしなくなると、デザイン性も落ちてしまいます。
ロレックス/デイトジャスト(Ref:16233)のジュビリーブレスレットを例に磨きの工程を見ていきます。
ロレックス/デイトジャスト/Ref.16233/搭載ムーブメントCal.3135
1945年ごろ、デイト表示機能を搭載した「デイトジャスト」を発表。
1955年、0時ごろに瞬時に日付が切り替わるデイトジャスト機構を発表。この機構はロレックスの3大発明の一つと数えられています。カレンダー表示を見やすくした「サイクロップレンズ」を搭載し、実用時計として広く愛用されるようになりました。
Ref.16233は1988年ごろ~2006年まで製造され、後継機のRef.116233の製造開始により製造終了となりました。
ジュビリーブレスレットのセンターリンク3列を磨いた後、鏡面部分に傷がつかないようにテープを貼り、マスキングします。
表面の固い、スコッチフラップバフで、1駒ずつ丁寧にヘアラインを入れていきます。マスキングテープ部分を避けて、押し付ける力を細かく調整しながら行います。
手前の列のヘアラインを入れました。つや消しをしたことで、センターリンク3列の鏡面が引き立ちます。
仕上げが完了したブレスレットです。鏡面部分の重厚さと、ヘアライン仕上げのシャープな印象にメリハリがつき、ジュビリーブレスの特徴を再生することができました。
鏡面仕上げ同様に、ヘアライン仕上げにおいても、時計の形状に合わせて様々な工具を使い分けています。
before | after |
新品仕上げを実施することで、鏡面部分とヘアライン部分のメリハリのある、購入時の輝きがよみがえります。オーバーホールと一緒に是非新品仕上げもご依頼ください!