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時計修理技術者コラムVol.29 時計内部のごみ、水入り

時計修理技術者コラムVol.29 時計内部のごみ、水入り

止まりの原因

時計の機械内部にごみなどが入り込み、止まりの原因となることがありますが、なぜオーバーホールをしてから裏蓋を開けたことが無いのにごみや湿気が入ってしまうのでしょうか?

空気の膨張率

日中空気を入れたはずのボールが、気温が下がった朝方に少し縮んでいることがあります。
これはボール内部の空気が冷やされて体積が小さくなったため起こっている現象です。
時計でも同じ現象が起きています。
強固なケースに守られた時計の場合だと、時計が変形するのではなく、わずかな隙間からごみや湿気を吸い込んでしまう恐れがあります。
ごみや湿気を吸い込んだ状態で腕に付けてしまうと、時計内部の温度が上がり、内部に汚れや湿気を残して膨張した空気だけを吐き出すことになります。
このような吸引作用は時計内部の温度と外気に差ができるたびに行われています。

オイスターケース

ロレックス/デイトジャスト/116234/オイスターケース
リューズを開放したままの状態だと外気をそのまま吸い込んでしまう状態になります。また、時計ケースとサファイアクリスタルガラスを固定するクリスタルワッシャー(ガラスパッキン)が潰れてしまうと、そこからごみや湿気が入ってしまう原因となります。

スピードマスタースナッチバック

オメガ/スピードマスターシューマッハモデル/3510-61
スポーツモデルという頑丈なイメージを持つオメガのスピードマスターですが、実際は3気圧/生活防水程度の機能しか持っていません。アウトドアなどで使用することで、水入りしてしまい、修理依頼をいただくこと多いお時計です。リューズやプッシャー(クロノグラフプッシュボタン)からのごみ、湿気入りの他、プラスチック風防からの混入も多く見受けられます。ひびが入ってしまった風防は早めの交換をお勧めします。裏蓋に関してはスナッチバック(圧入方式)を採用しているモデルは、固定しているテフロンやプラスチック製パッキンの歪みなどから異物が混入してしまいます。

ガラスの接着ビス止め式の裏蓋

フランクミュラー/カサブランカ/2852
フランクミュラーが展開しているほとんどのモデルがガラスに関しては接着方式を採用しているため、経年劣化によりぼろぼろになってしまうと、内外気温の差によって接着面からの異物混入を許してしまうことになります。定期メンテナンスのタイミングでガラスの接着を再度行うことで、気密性を保つことができます。裏蓋はビス止め式を採用しているため、パッキンが劣化しているとそこから内部に汚れが入ってしまう原因となります。

ごみ入りをしてしまうと……

輪列

0.1㎜程度の大きさの歯車が噛み合って動作しているムーブメントは、0.01㎜程度のごみやほこりでも止まりの原因となってしまいます。
ごみや汚れによってお時計が止まってしまう前に是非定期的なメンテナンスを!

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