手巻きの不具合
お時計を長期間使用していると、手でゼンマイを巻き上げる際、本来よりも手巻きが重くなってしまうことがあります。その原因としては、自動巻き機構の不具合が原因であることが多いですが、一番受け(一受)の摩耗が原因の場合もあります。
一番受けの摩耗が原因で手巻きが重くなってしまう症状は以前時計修理技術者コラムVol.15 一番受けの摩耗が引き起こす不具合~Cal.ETA2892編~にて紹介しましたが、今回はロレックスのCal.3000系のムーブメントを例にご紹介します。
一番受け(一受)の摩耗
ロレックスCal.3000系ムーブメントの一番受けには、ゼンマイを巻き上げる歯車として、丸穴車、スライディングギア、スライディング中間車、角穴車の4つの歯車が取り付けられています。
油切れが原因で手巻きが重くなった場合、オーバーホールを行うことで、症状が改善します。
油切れの状態で、使用が長期間に渡ると、一番受けのスライディング中間車が収まるダボ(軸)が徐々に削れてしまい、さらに手巻きの違和感(ごりごりとした感触)が大きくなります。
【通常の一番受けと、摩耗した一番受け】
写真のような状態になってしまった場合、部品の修正では動作は改善されません。
一番受け自体を交換しないと、手巻きの違和感が解消されることはありません。
手巻きに違和感を感じたら……
手巻きに違和感を感じたら今回紹介した一番受けに摩耗が生じている可能性があります。ロレックスは自社ムーブメントを搭載しているため、一番受けもロレックス専用のものになりますが、一般に流通している部品ではないため、入手が非常に困難(入手できても非常に高額)なため、不具合が発生する前にメンテナンスを受けられることをお勧めいたします!