オーバーホールのススメ
ロレックスの時計が自社性ムーブメントを搭載していることはあまりに有名ですが、そのムーブメントのクォリティーの高さ、故障頻度の少なさから、メンテナンスを一度も受けずに何年・何十年も使用されているユーザーさんが多いようです。今回はロレックスのムーブメントを例に交換頻度の多い部品の紹介と、定期メンテナンスの大切さをご紹介いたします。
ロレックス/デイトナ(Cal.4130)の特徴
デイトナには2000年から現在に至るまで、Cal.4130というムーブメントが使用されています。
発表されてから20年弱の間にマイナーチェンジを繰り返し、ムーブメントの耐久性や精度を高めています。ロレックスが完全に自社生産した機械で基本的には丈夫に作られています。またメンテナンス(オーバーホール)も非常にしやすい設計になっています。ただ、非常にクォリティーの高いムーブメントのため、異音がする、止まりなどのお客様自身で気づきやすい不具合が起こりづらいという特徴があります。
旧型のクロノグラフランナー(左)と新型のクロノグラフランナー(右)です。外周の歯車の形状が改良されています。
旧型の4番車(左)と新型の4番車(右)です。内側の歯車の形状が改良されています。
摩耗しやすい部品
「最近止まりやすくなった、遅れが気になる。」などの理由でお持込いただいた時計を見ると、油の劣化、部品の摩耗がかなり進行していたケースが多いです。下記にご紹介する部品のような状態になってしまうと、部品の修正ができず交換が必要になります。交換部品が多くなると、結果的に修理代金が高額になってしまうことになります。
交換が必要な状態の2番車です。中心部分が摩耗し黒くなっています。
アンクル全体図(前)アンクル拡大図(後)
調速機構のアンクルです。矢印部分の爪石に傷が入っています。動きが悪くなり精度不良の原因になります。
新品のフリクションスプリング(前)摩耗により円状に溝ができたフリクションスプリング(後)
センターセコンドが取り付けられる歯車を規制している部品です。
早め早めのメンテナンスを!
購入して最初のメンテナンスはなかなかタイミングがつかめないというお客様もたくさんいらっしゃいますが、早めのメンテナンスをしていただくとトラブルなくお時計を使用いただけると思います。特に新品の時計は、最低限の油量しか注油されていなかったり、お客様の手元に渡るまでにすでに数年が経過していたりする場合もあるんです!
お時計の深刻な故障が発生する前に、3年から5年に一度定期メンテナンスをお勧めいたします。